2012年3月11日

トリック

ドラマのトリック・シリーズの第5話に示されているのは、過疎地の素朴な村民たちが、現実の選択において物理学者の浅知恵など何ら信じていない、ということ。

「まるごと消えた村(解決編)」http://goo.gl/cgSks
宝女子村の村長 : 俺たちは25年ごとにお鶴に生け贄をささげねばなんねえ。さもなくばこの村にとっつぇもねえ災いがおとずれる。干ばつ・地震・大雨・バッタ・エルニーニョ。(中略)儀式を前田さんに見られた俺たちは、とっさに三井を利用することを思いついた。三井の超能力で前田さんば消されたと世間さ思わせる。
上田次郎 : そんなバカな話、人々が信じるはずないだろう。
宝女子村の村長 : んだっきょ? 実はおめえのような偉い学者先生が、俺たちの村さ調査来ると聞いた時、俺たちはしめたと思った。おめえさえ騙せば、世間はミラクル三井の超能力を信じるにちげえねえ。おめえが戻って、この村で見た奇跡の数々を証言してくれさえすれば。
売れっ子マジシャンの山田 : 上田さん1人なら騙せたと思います。

遠藤周作の『沈黙』にあった「農民のしたたかさ」という表現を思い出させる。物理学者の言うこと(3分ビデオ「絶対安全」http://goo.gl/D5XwQ)など誰も信じないまま、とりあえずその場の損得勘定を使うのである。


さて、『トリック』において「学者の理論より常識のほうがまともだ」という基調モチーフと併せて、しばしば示されるモチーフに、インチキを曝いても救いにならないことがある、というのもある。

「母の泉」の末尾
菅井きんの部下 : 正しいことしたつもりか? 見ろ、なんも変わっちゃいねえ。ビッグマザーを失ったあいつらに何が残る? 希望も救いもねえ人生が待ってるだけだ。本当にあいつらを救おうとしたのはどっちだ? おめえたちか、おれたちか?

「千里眼」の末尾
病気の少年 : 先生、ぼく治らないの? 死んじゃうの?
千里眼の男 : そうだよ。先生はインチキだからね。

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