せっかくブログお持ちなんですからどんどん掲載しちゃって下さい、と記者から言っていただいたので、今月分をコピペ。
2009年にデュトワの「兵士の物語」で実施された第1回以来、旬の演奏者と魅力的なプログラム内容を低価格で提供している「アクロス・アフタヌーンコンサート」のシリーズ。筆者はウィークデーの14時からという開催枠に地団駄ふんできた1人だが、今回はいくつかの偶然が重なって、ブリュッセル出身の精鋭「ダネル弦楽四重奏団」の演奏を聴くことができた(10月11日・アクロス福岡シンフォニーホール)。
クラシックの演奏会では、開始1本目の演奏がベタリと平板に響くことが、よく起こる。客席空白のリハーサル時と満場の本番とでは、ホールの残響が大きく変化し、ステージ上の演奏者は本番で、自らの「音」を異質なものとして意識してしまいがちだ。しかも、そこに集まった聴衆の息づかいが、音楽の傾聴へと収斂していく前に「音」が発されると、その異質性は一層増してしまう。演奏前に、マイクを通して「日本の皆さん」への挨拶トークをしてくれたけれど、ああした観客サービスもまた、演奏の勘を狂わせたかもしれない。
序盤のヴァインベルク「アリア」では、そんな残念な思いを抱かせたものの、シューベルト「ロザムンデ」の第2楽章、そして休憩をはさんでのラヴェルは、文字通り見事な演奏だった。雲母の切片を思わせるマルク・ダネル(第1バイオリン)の繊細な音の粒を、丸みのあるギー・ダネル(チェロ)のバスが支える。
付記するならば、この充実した聴体験は、弦楽四重奏以外の楽器を交えない洗練されたプログラミング(選曲)にも支えられていた。これがもし、地元のピアノや木管などの演奏家と組み合わせ五重奏の曲目を交えることで、「聴きやすく」「集客のよい」企画であったら、同質の楽器ばかりで編成された弦楽四重奏そのものの「音」の明暗は、これほど伝わってこなかっただろう。
九響第311回定期(9月29日)は、デュリュフレ(1902-1986)の「レクイエム」。オルガン伴奏版、弦楽合奏伴奏版、管弦楽伴奏版など、いくつかの楽譜が刊行されているが、今回はハープ、チェレスタ、オルガン、タムタムなど多様な楽器を配した、もっとも贅沢なバージョンでの演奏が、秋山和慶の指揮で実現した。八木寿子(メゾ・ソプラノ)は、ピアニッシモからフォルテまで、どのダイナミクス(音量)でも、低音から高音まで、どの音域でも、滑らかで豊かな響きを聴かせてくれた。
また、九響合唱団による第7曲ルクス・エテルナ(永遠の光)の加算リズム的な朗唱は、鈴木隆太(オルガン)の繊細な音運びも相俟って、同時代のメシアン(1908-1992)の音楽語法を思わせる演奏となった。歌詞の上で、ディエス・イレ(怒りの日)の代わりにリベラ・メ(私を赦したまえ)が焦点化されている共通点はあるが、一世代前のフォーレ(1845-1922)の若書きの「レクイエム」と比較することは、もはや不要に思える。
お薦め演奏会
◆バレエフェスティバル2011 10月30日13時、アクロス福岡シンフォニーホール。
オーケストラの仕組みを、踊り(振付:中島伸欣ほか)と九響の演奏で、わかりやすく表現する。曲はブリテン「青少年のための管弦楽入門」。
◆ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)リサイタル 11月1日19時、アルカスSASEBO中ホール▽11月3日14時、鹿児島県立みやまコンセール。1985年生まれ、昨年の第16回ショパン国際コンクール(ショパン生誕200年)の優勝者。輝くリズムと躍動感は1965年の優勝者アルゲリッチの優勝当時の演奏を想起させる。曲目はプロコフィエフ「ソナタ2番」、リスト「悲しみのゴンドラ」など。
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