2011年10月23日

お出かけクラシック(毎日10月22日夕刊)

せっかくブログお持ちなんですからどんどん掲載しちゃって下さい、と記者から言っていただいたので、今月分をコピペ。

2009年にデュトワの「兵士の物語」で実施された第1回以来、旬の演奏者と魅力的なプログラム内容を低価格で提供している「アクロス・アフタヌーンコンサート」のシリーズ。筆者はウィークデーの14時からという開催枠に地団駄ふんできた1人だが、今回はいくつかの偶然が重なって、ブリュッセル出身の精鋭「ダネル弦楽四重奏団」の演奏を聴くことができた(10月11日・アクロス福岡シンフォニーホール)。
クラシックの演奏会では、開始1本目の演奏がベタリと平板に響くことが、よく起こる。客席空白のリハーサル時と満場の本番とでは、ホールの残響が大きく変化し、ステージ上の演奏者は本番で、自らの「音」を異質なものとして意識してしまいがちだ。しかも、そこに集まった聴衆の息づかいが、音楽の傾聴へと収斂していく前に「音」が発されると、その異質性は一層増してしまう。演奏前に、マイクを通して「日本の皆さん」への挨拶トークをしてくれたけれど、ああした観客サービスもまた、演奏の勘を狂わせたかもしれない。
序盤のヴァインベルク「アリア」では、そんな残念な思いを抱かせたものの、シューベルト「ロザムンデ」の第2楽章、そして休憩をはさんでのラヴェルは、文字通り見事な演奏だった。雲母の切片を思わせるマルク・ダネル(第1バイオリン)の繊細な音の粒を、丸みのあるギー・ダネル(チェロ)のバスが支える。
付記するならば、この充実した聴体験は、弦楽四重奏以外の楽器を交えない洗練されたプログラミング(選曲)にも支えられていた。これがもし、地元のピアノや木管などの演奏家と組み合わせ五重奏の曲目を交えることで、「聴きやすく」「集客のよい」企画であったら、同質の楽器ばかりで編成された弦楽四重奏そのものの「音」の明暗は、これほど伝わってこなかっただろう。
九響第311回定期(9月29日)は、デュリュフレ(1902-1986)の「レクイエム」。オルガン伴奏版、弦楽合奏伴奏版、管弦楽伴奏版など、いくつかの楽譜が刊行されているが、今回はハープ、チェレスタ、オルガン、タムタムなど多様な楽器を配した、もっとも贅沢なバージョンでの演奏が、秋山和慶の指揮で実現した。八木寿子(メゾ・ソプラノ)は、ピアニッシモからフォルテまで、どのダイナミクス(音量)でも、低音から高音まで、どの音域でも、滑らかで豊かな響きを聴かせてくれた。
また、九響合唱団による第7曲ルクス・エテルナ(永遠の光)の加算リズム的な朗唱は、鈴木隆太(オルガン)の繊細な音運びも相俟って、同時代のメシアン(1908-1992)の音楽語法を思わせる演奏となった。歌詞の上で、ディエス・イレ(怒りの日)の代わりにリベラ・メ(私を赦したまえ)が焦点化されている共通点はあるが、一世代前のフォーレ(1845-1922)の若書きの「レクイエム」と比較することは、もはや不要に思える。

お薦め演奏会
◆バレエフェスティバル2011 10月30日13時、アクロス福岡シンフォニーホール。
オーケストラの仕組みを、踊り(振付:中島伸欣ほか)と九響の演奏で、わかりやすく表現する。曲はブリテン「青少年のための管弦楽入門」。
◆ユリアンナ・アヴデーエワ(ピアノ)リサイタル 11月1日19時、アルカスSASEBO中ホール▽11月3日14時、鹿児島県立みやまコンセール。1985年生まれ、昨年の第16回ショパン国際コンクール(ショパン生誕200年)の優勝者。輝くリズムと躍動感は1965年の優勝者アルゲリッチの優勝当時の演奏を想起させる。曲目はプロコフィエフ「ソナタ2番」、リスト「悲しみのゴンドラ」など。

2011年10月13日

感想(9月29日の九響定演)

どうみても「フランス三昧」という趣旨のプログラミングだったが、タイトルはなぜか「オラトリオの世界」。
ラヴェル/バレエ組曲「マ・メール・ロワ」
デュリュフレ/レクイエム 作品9
ショーソン/交響曲 変ロ長調 作品20

なんでこういうタイトルになるのかを勝手に推測して解説しますと、デュリュフレのとても綺麗なレクイエムをやろうと思ったら、なんか楽器編成が派手になっちゃって、いっそのことハープとか使う曲目をいろいろつっこんじゃえ、という選曲プロセスだったので、編成には力入れたしお金もかけました、ということが「オラトリオ」という単語に表現されているのデス。

このタイトルの下にくっついていた惹き句は、タイトルよりも更にパワフルであった。
「フォーレの名作に匹敵するデュリュフレ「レクイエム」の天国への昇華」
これはなに?
演奏会の魅力を伝えたがっているようには到底思えない。

指揮は秋山和慶。
マメールロワはベタッとしているように思えたが、レクイエムは聴き所満載。
まず声量豊かな八木寿子(Mezzo Sop.)の張りのある高音とドラマティックな低音の轟きに圧倒された。八木さんの名前をインターネットで検索したら、高本秀行さんが激賛していて、その言葉のひとつひとつに「うんうんそうだろうそうだろう」と納得した。http://blog.goo.ne.jp/piano_music/e/55501fc4842706efa0ca79bd356dd1c2
また第7曲のLux aeternaにはハッとさせられた。
この日は、とてもメシアンぽく聞こえた、というか、それは、朗唱重視で加算リズム的になっていることもあるし、鈴木隆太(Org.)の音運びがとても繊細で美しかったこともあるんだろうけれど、少なくとも、こんなに斬新で面白い表現を、フォーレの若書きのレクイエムにたとえるのはもはや不要なことだと実感した。
鈴木隆太は昨年サン=サーンスの第3番でも九響と共演した方で、この公演を聞き逃したのが、今さらながら惜しくなった。
http://orchestra.musicinfo.co.jp/~kyukyo/kyukyoFiles/profile/2010solist.profile/10ryuta_suzuki.html

休憩をはさんでショーソン。
霧島で聴いたヴァイオリン協奏曲(編成はVn, Pf, SQ)の好印象もあって、とても期待していたのだけれど、なんだかうまくはまれなかった。
ウォーウォーウォーと唸る旋律には、時折ワーグナーの序曲ものが感じられ、その合間合間に「ぞうさん」の輪郭が乱入してくる。ここでの「ぞうさん」はシャミナードのフルート協奏曲よりも強烈かつ明瞭な「ぞうさん」である。
プログラムノートで、奥田佳道さんが「19世紀のフランスで紡がれた交響曲芸術の逸品にも関わらず演奏の機会に恵まれない」と書いていたが、どういうところに逸性をお感じなのだろう。読みたかったな。

2011年10月9日

様子をみる、について

金曜はさやかがグッタリして、わたしは命の縮む思いをした。
40度の熱が出ていても、キトキト笑ってグイグイ食欲を発揮するタイプの子が、おもちゃを抱えて一日ゴロンとしているのを目にするのは、たまらないものだ。

予防接種をしていないだけに「もしや日本脳炎か?」などと、いろいろな思いがうかび、授業2つと面談1つと面接試験1つを全て投げ出して、精密検査のできる大病院に連れて行こうか、と慌てふためいた・・・・が結局、投げ出すことができずに、研究室でシッターさんに看てもらい、夕方、ホームドクターに診せて、再処方を頼んだ。

ああ、あの選択には自信がない。
今回は大事に至らなかったからよかったものの、母親として、投げ出さなかったことを悔やむ気持ちもある。

今回は、鼻風邪のために木曜に処方してもらった水薬のうち、シプロヘプタジン塩酸の割合が、さやかには多すぎたために、ボーッとしていた。
そんな気がしたから、金曜のお昼は投薬をお休みしつつ、夕方まで、いわば「様子をみて」いたのだが、この「様子をみる」という行為は、基本的に「片時も離れずに」行いたいものであって、95分(授業1コ分)離れたり、40分(面接試験)離れたりしながら、「様子をみる」のは、さやかに申し訳ない。

2011年9月17日

リバーマンによるThe EyeWriterプロジェクト

メディアアーティストのリバーマン氏が再来日。
2年前講演通訳させていただいた時、たまたま4つ授業をこなした直後の通訳役だったので、私の頭が疲れちゃっていて、meditationを訳せないというドボンをやらかしたのだけれど、 彼のつくるインターフェイスは本当に面白かった。
「図と地」の原理を最大限に生かしたプログラミングの発想で、光に影絵ポーズの手をかざすと、手のフォルムをモニタ上でコロンコロンと転がる映像オブジェクトにしてくれて、それがリズムにのって動き出す・・・


感性融合デザインセンター ワークショップ・講演会
「ザッカリー・リバーマンによるThe EyeWriterプロジェクト in 福岡」

世界的なメディア・アーティスト、ザッカリー・リバーマン氏を招いてのトーク&ワークショップ!2010年に世界最大のメディア・アートの祭典、アルス・エレクトロニカでゴールデンニカを受賞した「The EyeWriter」プロジェクトに関す
る、ザッカリー氏によるトークとワークショップを開催します。
「The EyeWriter」は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)により全身が麻痺してしまったグラフィティ・アーティストに「再びグラフィティを描けるように」という願いから始まったプロジェクト。
講演では「The EyeWriter」プロジェクトを中心としたザッカリー氏の活動についてのトークが行われます。また、ワークショップでは実際に「The EyeWriter」の仕組みがレクチャーされ、「The
EyeWriter」のデバイスを応用したアプリケーションを作ります。

講演会:
10/3(月) 19:00~21:00
-九州大学 大橋サテライト ルネット

ワークショップ:
10/2(日) 12:00~18:00
-九州大学 芸術工学府 大橋キャンパス 7号館1F ワークショップルーム

10/3(月) 12:00~18:00
-九州大学 大橋サテライト ルネット

講師:
ザッカリー・リバーマン

参加条件:
講演会,ワークショップともに入場無料
ワークショップは事前申込が必要。両日とも参加可能な方で,かつプログラミングの経験があることが望ましい。なお,ノートPCを持参していただくことになります。
ワークショップの見学は自由ですが,部屋に入る人数の関係上,ご遠慮願うことがあるかも知れません。
講演会は事前申込の必要なく,自由に参加いただけます。


主催: 九州大学大学院感性融合デザインセンター

共催: 九州大学大学院統合新領域学府ユーザー感性学専攻

企画・運営: 藤岡 定 + anno lab.

WEB: http://www.anno-lab.com/event/tewfukuoka/

facebookイベントページ: http://www.facebook.com/event.php?eid=202269459838407
twitterハッシュタグ: #tewfukuoka

2011年9月16日

ためすぎショッピングカート

2011年9月14日

西南 秋の講座

魅力的な講演会がいっぱい。
2〜4は夕方なので無理だけど、1は15:10〜16:40。 

1.読書教養講座 9/28町田康「内面の作成」
http://katsuji.yomiuri.co.jp/kyouyo/

2.2011年度後期リカレント講座「楽しい英語読書入門」
http://www.seinan-gu.ac.jp/community_connect/lifelong_learning/recurrent.html

3.今、世界の経済は
http://www.seinan-gu.ac.jp/community_connect/lifelong_learning/lecture.html

4.東日本大震災がもたらした課題-大規模災害対応への基礎力-
http://www.seinan-gu.ac.jp/community_connect/lifelong_learning/lecture.html

2011年9月12日

9月27日 檜垣智也さんのアクースモニウム・リサイタル

檜垣智也さんのリサイタル(9月27日/アクロス福岡1F円形ホール)の案内をいただいた。

檜垣さんは、愛知県芸で作曲を学んだ後、パリで「アクースモニウム」を修業して、この新しい音響芸術の世界を、創作・上演の両面から紹介しているサウンド・アーティスト。
私はJ.-Y.ボスールの『現代音楽を読み解く88のキーワード』を翻訳する際、「アクースモニウム」の項目はもちろん「電子音響音楽」の項目も、ずいぶん助けていただいた。

... 「アクースモニウム」は、ホール内に16個以上のスピーカーを縦横に配置して、録音作品の上演中にどんどんミキサー卓を操作し、個々のスピーカーの個性を際立たせながら、様々な大きさ・距離・方向から「音響スクリーン」を形成する芸術。ミキサー卓の操作次第で、ニュアンスやコントラスト、立体感や動きが生まれるという、いわばスピーカー群によるオーケストラ。この喩えでいくと、ミキサー卓に座る人は、いわば指揮者にあたると思うんだけれども、この領域に通じたフランソワ・ベルなんかは、アクースモニウム自体を「聴感を演出する楽器群」と表現しているほどなので、彼のイメージの中で「アクースマット」は指揮者というよりスピーカーを鳴らす演奏者という位置づけなのかもしれない。響きの出来事を視覚的に提示するソフトウェアとして「アクースモグラフ」も開発されていて、仏独では、かなり定着しているらしい。

9月27日には以下5作品が上演される。
・檜垣智也『Incorporeal』
・今史朗『生命の水』
・中村滋延『Passion』
・パルメジャーニ『La Roue Ferris』
・デュフール『変態』

残念なのは、私には、まだこの「アクースモニウム」という領域について、耳でアプローチし、上演の有様を記述したりする力がないこと。その力があったら、いろいろな場面で書きたいのだが・・・

いわゆる伝統的なクラシック音楽に関しては、聴音・視唱の訓練15年を経て、くり返し再生可能なCD評からスタートし、それを5〜6年も続けてから、ようやく演奏会評にとりかかるにいたった。その演奏会評だって、事前にNaxos Music Libraryで曲目をゴリゴリ予習してから臨んでいる。
しかしアクースモニウムの場合、上演される曲目はほとんど初聴の曲ばかり。
独仏ではかなりメジャーなアート領域だというけれど、日本に暮らしているかぎり、耳を鍛える方法も、言語化された評がどんな聴き所をたよりにしているのかも、心許ない。

とはいえ、今は地道に、トレーニングするのみ。
事前に入手できる曲が2つほどあって、私の恩師で元上司の中村滋延先生の『Passion』は聴くチャンスあるし、パルメジャーニの『La Roue Ferris』についてもiTunesに載っかっているのをみつけたぜい。
http://itunes.apple.com/jp/album/la-roue-ferris/id315769301?i=315769397&ign-mpt=uo%3D4

9月25日 宮崎由紀子さんのチャリティークラシックコンサート

ピアニストの宮崎由紀子さんが、八幡の「プレリュード」(http://www1.bbiq.jp/prelude/)で9月25日にチャリティーコンサート。
ショパンの夜想曲3曲や、エドゥアルド・ヴォルフの「マズルカ形式によるノクターン」などが演奏されるのだが、このあたりは、去る1月8日に松本直美さんの講演会で宮崎さんに弾いていただいた作品。

自分の関わらせてもらった企画の中身が、こうして別の形で広がっていくのは、とても嬉しい。

10月8日 西南学院大学オルガンコンサート

秋の西南学院大学オルガンコンサートは、廣江理枝氏(東京藝術大学准教授)をお招きします。
是非、お誘い合わせの上、ご来場ください。



...   日 時:2011(平成23)年10月8日(土)
開 場:15:30 / 開 演:16:00
会 場:大学チャペル
入場料:無料

【曲 目】「神はわがとりで」     BWV 720 J.S.バッハ
協奏曲ニ短調       BWV 596 J.S.バッハ
前奏曲とフーガ 変ホ長調 BWV 552 J.S.バッハ 他

会場で社会福祉施設等への自由募金を行います。