2010年9月24日

たえまなく揺れるゆりかごから

「たえまなく揺れるゆりかごから」は、ホワイトマン(Walt Whitman, 1819–1892)の詩。おそるべき比喩。

以下はグリフィス『イントレランス』(1918)の鑑賞メモとトラック1の書き取り。

  • 四つの物語

    • 現代のゆりかご (A.D. 1914)・・・社会の不寛容のために、青年が無実の罪で死刑宣告を受ける
    • ユダヤのゆりかご (A.D. 27)・・・不寛容なファリサイ派のためにキリストが受難を受ける。
    • フランスのゆりかご (A.D. 1572)・・・ユグノーを認めまいとするところから起こったサン・バルテルミの虐殺
    • バビロンのゆりかご (539 B.C.)・・・ベル教神官がイシュタル信仰興隆をみて裏切り、バビロンがペルシャに滅ぼされる
  • 作品構成についての別観点・・・a prologue, two acts and a short epilogue, is described by title cards(filmsiteによる)。つまり、バビロンはエピローグだと。
  • ウィキペディア日本語版は、「言うまでもなく」としてリリアン・ギッシュはマリアの象徴だとしているが、べつにそういう象徴である必然性はないと思う。
  • 作品分析 http://www.cineclubdecaen.com/realisat/griffith/intolerance.htm
  • IVC BEST SELECTION版では、あまたの文献で言及される、場面ごとの色分けがわからないのだが、上映時にフィルターでもかぶせるのだろうか。
  • トラック1(=1/16)書き取り
    The dream of lives, hearts, glories ----- once bright with life, that now are dust.
    Our play is made up of four separate stories, laid in different periods of history, each with its own set of characters. Each story shoes how hatred and intolerance, through all the ages, have battled against love and charity. Therefore, you will find our play turning from one of the four stories to another, as the common theme unfolds in each. "Out of the cradle endlessly rocking." Today as yesterday, endlessly rocking, ever bringing the same human passions, the same joys and sorrows.

    人生・愛・栄光の夢・・・かつては命をおびて輝くも、今や塵と化す。
    この作品は4つの異なる時代の異なる人々の物語から成る。
    それぞれの物語は、憎悪と不寛容がいかに人間愛と慈善をさまたげたかを物語る。
    従って、4つの話は、1つの話から次の話へと移っていくものの、そこでは同じ主題が展開する。
    「たえまなく揺れるゆりかごから」昨日も今日も揺れ続けて、人間の情熱、喜び、悲しみをあくことなく紡ぎ出す。

    Seeing youth drawn to youth, Miss Jenkins realizes the bitter fact that she is no longer a part of the younger world.
    The girl of our story keeps house for her father who works in a Jenkins mill. With a wage of $2.75 a day, a little garden, four hens, ditto geese, and a fair measure of happiness and contentment.
    "the little Dear One"
    The Boy, unacquainted with the little Dear One, is employed with his father in the same mill.
    Age intolerant of youth and laughter. 'The vestal virgins of Uplift' succeed in reaching Miss Jenkins in their search for funds. "We must have laws to make people good." "There is dancing in cafes."
    ジェンキンス女史は、若者たちが互いに惹かれ合うのをみて、自分がその若い世界に属していないという辛い事実に気づく。
    この物語の娘の父は、ジェンキンス工場で働いている。父の日給は2.75ドルだが、小さな庭と4羽の雌鳥とガチョウを飼って、つつましく幸せに暮らしている。
    かわいいお嬢ちゃん!
    可愛い嬢ちゃんといずれ出会う青年も、同じ工場に雇われている。
    若さと笑いを受け入れない時代。工場運動家たちは、資金繰りのために、ジェンキンス女史を訪ねる。「人々をよくするための法律が必要です」「カフェには舞踏場があります」

    Comes now from out the cradle of yesterday, the story of an ancient people, whose lives, though far away from ours, run parallel in their hopes and perplexities.
    Ancient Jerusalem, the golden city whose people have given us many of our highest ideals, and from the carpenter shop of Bethlehem, sent us the Man of Men, the greatest enemy of intolerance.
    Near the Jaffa gate.
    The house in Cana of Galilee.
    Certain hypocrites among the Pharisees. [Pharisee - a learned Jewish party, the name possibly brought into disrepute later by hypocrites among them.]
    When these Pharisees pray they demand that all action cease.
    "Oh Lord, I thank thee that I am better than other men." "Amen."
    今度は過去のゆりかごから、古代の人々の話。彼らの生活は、我々の生活とはかけ離れているが、希望や苦難はよく似ている。
    私たちに崇高な理想を与えてくれた黄金の町エルサレムは、ベツレヘムの大工店を通して、私たちに、人の中の人、不寛容と戦う者を送った。
    ヤッファ門の近く。
    ガリラヤのカナの家。
    ファリサイの偽善者たち。(ファリサイとはユダヤ教の教養層で、その名は彼らのうちの偽善者のために後に不名誉なものとなった)
    ファイサイ人は祈る時に全ての行動を停止する。
    「主よ、私はあなたに選ばれました」「アーメン」

    Another period of the past. A.D. 1572 - Paris, a hotbed of intolerance, in the time of Catherine de Medici, and her son Charles IX, King of France.
    Charles IX (Frank Bennett) receives his younger brother, Monsieur La France, Duc d'Anjou. The heir to the throne is the effeminate, foppish Monsieur La France. Pets and toys his pastimes.
    Catherine de Medici, queen-mother who covers her political intolerance of the Huguenots beneath the cloak of the great Catholic Religion. [NOTE: Huguenots - the Protestant party of this period.] The great Protestant leader is white-haired Admiral Coligny, head of the minority Huguenot party.
    "What a wonderful man, the Admiral Coligny, if he only thought as we do." "What a wonderful king, if he only thought as we do."
    The King's favor to Coligny increases the hatred of the opposite party.
    Celebrating the betrothal of Marguerite of Valois, sister of the King, to Henry of Navarre, royal Huguenot, to insure peace in the place of intolerance.
    Marguerite of Valois, Henry of Navarre.
    Brown Eyes, her family of the Huguenot Party, and her sweetheart, Prosper Latour.
    Brown Eyes attracts the attention of a mercenary soldier.
    過去における別の時代。1572年のパリ。そこは不寛容の温床で、カトリーヌ・ド・メディチと彼女の息子にしてフランス王であるシャルル9世の時代。
    シャルル9世は、弟のアンジュー公から謁見を受けている。王位継承者はひ弱で軽薄なアンジュー公。ひまつぶしにペットとおもちゃをさわっている。
    王妃カトリーヌ・ド・メディチは、自身のユグノー派に政治的不寛容の隠れ蓑に、偉大なカトリック信仰を利用している。(注:ユグノー派とは当時のプロテスタント派) 弱勢たるユグノー派の最高指導者コリニー提督。
    「コリニーが私たちと同じ考え[=旧教徒]なら素晴らしい男なのに」
    「彼が私たちと同じ考え[=新教徒]なら素晴らしい王なのに」
    国王のコリニー寵愛は、反対派[=旧教徒]の不満を呼ぶ。
    国王の妹、ヴァロワ家のマルグリットとの婚約を祝って、王家のユグノー派であるナヴァール家のアンリは、不寛容の地で平和の保険をかける。
    ヴァロワ家のマルグリット。ナヴァール家のアンリ。
    ユグノー派の娘ブラウン・アイズと、彼女の恋人プロスペル・ラトゥール。
    ブラウン・アイズは、1人の傭兵の注意をひく。

    Returning to our story of today, we find the embittered Miss Jenkins aligning herself with the modern Pharisees and agreeing to help the Uplifters.
    現代の話に戻る。ジェンキンス女史は、現代のファリサイ人たちに加担し、向上運動家への協力に同意する。

2010年9月23日

おはようカンダハル

NFBが、アフガニスタンの日常風景を流している。
そこが、いかに穏やかで、豊かな場所であるか、しみじみ感じさせられる撮り方。

隣国USAに煽られることなく、イラク戦争に加担しなかった国カナダの見識。
http://images.nfb.ca/images/pages/en/?ec=img20100922

「The Sweetest Embrace, Good Morning Kandahar」からの一場面とのこと。
私はドキュメンタリーのことをあまり知らないが、よい機会なので、来年の「表象メディア論」でドキュメンタリーにおける演出をテーマにしてみようかと思う。




  • 日本国際文化学会 http://www.jsics.org/
    日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/






  • 水月 昭道『ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院』 (光文社新書) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334035825/musiclef-22/






  • 論文を書くための注意点 http://www7b.biglobe.ne.jp/~satoki/ronbun/hon/naiyou.html
    とくにこれ大事。よく「作曲家Aはあまり知られていないのでその創作の一端を明らかにする」とか言って作品分析する例があるが、この論法だけでは非常につまらない。






  • Earth Day 2010 http://www.earthday-tokyo.org/






  • Trapped In The Closetの評 http://doops.jp/2007/08/rkellyrpvtrapped_in_the_closet.html






  • いつどこネット http://itsu-doko.net/






  • 安積力也(基督教独立学園校長)氏がNHK「こころの時代」で引用していた内村鑑三の言葉
    読むべきは聖書
    学ぶべきは天然
    為すべきは労働






  • 神学 F.ハーン『新約神学 I 上』Amazon・・・須藤先生「新約神学A」のテキスト






  • インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル(ICAF) 9月23日(木)~26日(日)場所:国立新美術館3F講堂 http://www.t-kougei.ac.jp/






  • 『偉大なるアンバーソン家の人々』序の部分がファッション史のよう。http://www.youtube.com/
    Orson Welles - prod.,dir.,script (1942)
    from the novel by Booth Tarkington (1918)
    Prologue NARRATION:
    The magnificence of the Ambersons began in 1873. Their splendor lasted throughout all the years that saw their Midland town spread and darken into a city. In that town in those days, all the women who wore silk or velvet knew all the other women who wore silk or velvet and everybody knew everybody else's family horse and carriage. The only public conveyance was the streetcar. A lady could whistle to it from an upstairs window, and the car would halt at once, and wait for her, while she shut the window, ... put on her hat and coat, ... went downstairs, ... found an umbrella, ... told the 'girl' what to have for dinner...and came forth from the house. Too slow for us nowadays, because the faster we're carried, the less time we have to spare.






  • 竹皮クッキング作用 http://www.okuyama-net.co.jp/cooking.html
    http://ci.nii.ac.jp/naid/110004631576

  • 2010年9月16日

    freq2010 プログラムが表現する音と映像

    前の勤務先の研究室が、freq2010を開催します〜!!

    このたび、9月25日に九州大学大橋キャンパスにて、「freq2010 プログラムが表現する音と映像」を開催する運びとなりました。
    御多用の折とは存じますが、御来場の上、御高評をお願い申し上げます。

    freq2010
    プログラムが表現する音と映像

    九州大学芸術工学府中村研究室では、音楽表現のための新しいインタフェイスや、映像と音の相互作用を強調した作品について日々研究・制作しています。“freq”はテクノロジーと音・映像との関わり合いやその中から生まれる表現を追求する場として2001年より毎年開催されているイベントです。近年は特にmax/msp(現max5)、processing、openFrameworksなどのプログラミング環境を用いたグラフィカルな要素を伴うサウンド・パフォーマンスやインスタレーション、映像作品を多く発表してきました。またfreqは参加者同士の議論やコラボレーションを触発する交流の場としても機能し続け、多くのアーティスト、デザイナー、クリエイティブな学生が集います。今回は研究室内外の作品を展示とパフォーマンス・ショーケースの2つのプログラムでお届けします。今年で10年目を迎えるfreq、お楽しみください。


    <WEB>
    http://sound.jp/studiofreq/snlab/freq/2010/


    <開催概要>
    日時:2010年9月25日 土曜日 12時 – 21時
    場所:九州大学大橋キャンパス 多次元実験棟 1F, 2F
    入場:無料
    主催:九州大学中村研究室
    企画・構成:的場寛
    デザイン:宇佐美毅

    プログラム
    展示: 12時 – 18時
    パフォーマンス・ショーケース: 18時 – 21時

    <参加作家>
    [中村研究室]
    青木一生、稲垣光亮、川尻大輔、小島順一、土下竜人、中村智太、長濱裕太郎、新美太基、的場寛、松村智弘
    [ゲスト]
    津田三朗(九州大学芸術工学部デザイン基盤センター工作工房)
    Invisible Designs Lab.
    Florian Meyer (カールスルーエ、HfG)
    サウンド☆リノベーションバンド(藤枝研空室、河辺研究室)
    寺江圭一朗
    宇佐美毅(佐藤優研究室研究生)


    2010年9月10日

    後期のテキストづくり

    西南学院大学イベントカレンダー(http://sound.jp/musiclef/seinanevent.html)を公開して1年近くになるが、いまだにGoogleアラートの「西南学院大学」の対象になっていないのは、どうしたことなのだろうか。卒業生にとっても近隣にとっても有用なページだと思っているのだが。
    ま、こんなことは作った本人の主観的な思いなので、あてにはならない。『マイノリティ・リポート』の中でハイネマン女史も言っていた。
    「子どもは作品。親は子どもの欠点を見たがらないものよ」

    今週は後期のテキストづくりが佳境となる。
    先月までは、さやかと離れたくないがために、夏休みの終わりを迎えた小学生のように「ああ学校なんてなくなっちゃえばいいのに」の気分であったが、テキストづくりを通して、授業のワクワクがもどってきて、「いい先生になりたい」とふたたび思えるようになってきた。喜ばしい。

    それと、執筆で寝不足のため、ほぼ常時ハイモード。
    ああ世界は、世界はすばらしい。

    たとえば最近、エクセルの印刷画面に「拡大縮小印刷」というのがついた。
    Microsoft Officeの新機能で「使いやすくなった」と感じたのは初めてだが、これが良い機能であることは間違いない。

    また、アスクルの「ECO-TURN配送」が、この秋から福岡でもはじまることになった。配送のおじさんは「こんどエコタウンが始まりますんで」と言っていたが、エコターンでございまして。

    私は、年間15万枚のコンサートチラシを制作している人間であり、エコロジーなどとても語れる筋合いのものではないが、世の中のエコ系とりくみにならうと何がよいってとにかくゴミ捨てがラクになるってこと。
    マクロビ食をこころがけるようになったら、野菜の捨てる部位がほとんどなくなってゴミが減り、台所の見晴らしがよくなった。また、よく「うわー布おむつじゃたいへんでしょー」と言われるけれど、紙おむつ使っていたら、ゴミ箱の巨大化は避けられまい。
    いずれにせよ、さやかのかわいいおしりにふさわしいのはドビー織である。

    2010年9月4日

    愛にみちた日々、魅力的な本2つ

    さやかとの甘い日々も、もはや残り3週間。
    涙にくれてすごそうかという状態だが、今週は、いろんなことが愛に満ちていて、まず礼拝(8/29)がよかった。
    狭き門(マタイ7)を狭い入り口(ルカ13)とセットで学び、ジッド式の禁欲目標としてでなく、無用な争いを避けようとする実践論(イエスが広い門から入城したら一悶着あったにちがいない)だったのではないか、という観点を知ることができ、とても有益だった。
    週の半ばには、友人と久しぶりにランチをして、彼女は、せっけんシャンプーの店のパンフレットを持参してくれたり、勉強中の令翠学を駆使して、日々を大切に過ごすための鍵を教えてくれた。
    いろいろお誘いいただいたコンサートも多い。コンサート批評をお休みし、もしチケットがあったとしても場外とか親子席で聴く立場では、触手もはたらかせにくいけれど、こんなにあちこちからご厚意をいただけるなんて・・・。精進しなければ、むくいなければ。

    さらに、魅力的な本を2つみつけた。どちらを先によもうか。 まず以前、義母から薦められた村上龍のサイト「Japan Mail Media」に『新 13歳のハローワーク』が紹介されていて、興味をもった。 身近な子どもたちは、こういうのを読んでいるだろうか。 読んでいても読んでいなくてもいいのだけれど、成人するまでに、何でもよいから、日々を生きる手応えを感じられる生業をみつけられると、いいね。 それと文化経済学会の会報(季刊)No.73に載っていた池上惇氏の文章で内村鑑三の『地人論』。岩波文庫に入っているようだ。
    地質学の如く深からず、天文学の如く高からず、現世的にして皮相的なる地理学は、探り易くて解し易し。然れども其の解し易さが故に地の理は吾人これを思うこと稀なり、その解し易さが故に地の理は人の多く究めざる所なり。皮相的たる必ずしも浅薄の意にあらず。慈母の柔顔は彼女心情の現出ならずや、現世的たる必ずしも寸時の意にあらず、現在とは過去と未来を繋ぐ永遠の一部分たるにあらずや。地理学は実に諸学の基本なり。我ら地の事を知らざるにいかで天の事を悟るを得んや。(中略)地を以て始め天を以て終わる。殖産、政治、美術、文学、宗教は、此絶頂絶下両極端に亙る人生の階段なり。地を究めずして此の階梯を昇らんとする者は夢に雲井に上るが如く、発点なきが故に着点に達するを得ざる人なり。