2009年12月4日

ホールの入場率

昨日は午前中、地元の某ホール指定管理者の諮問会議に出てきた。
ここ15年間の事業概要に続いて、2010年度の事業概要の説明。
私にとっては、もってこいの勉強材料であり、資料である。
午後の授業を控え、超ダッシュの委員会参加だったが、とっても有意義♪

入場率増加へのとりくみとして、委員各氏から、チケット・プレゼントや、当日開場時間直前の学生向け割引券売、TVでの解説番組提供など、いろいろな意見がよせられたが、「実はすでに一部試みている」という回答が多く、おおぉ〜と感心してしまった。当日開場時間直前の学生向け割引券売について、来週、学生たちに教えてあげよう!

ああそれにしても、問題は入場率増加である。
福岡県は、政令指定都市を2つもかかえる大人口圏であるとともに、アマチュア音楽団体がものすごく多いので、潜在的には上演文化を構成しやすいはずなのだが、大学オケやアマチュア団体にどんだけ招待券を送っても、それを利用するアマチュアが非常に少ない。アマチュア団体数の過剰は、練習日程の過剰と横つながりでの券売ノルマの過剰に結びついており、アマチュア演奏層がプロの演奏会に足を運ぶモチベーションが相対的に低下しているような気がする。

また福岡は、外食産業・リラクゼーション産業がワイワイ盛んな風土なので、アフター5のアミューズメントとしては「外食」「リラクゼーション」への比重があまりに高く、同じ時間帯に上演事業へ足を運ぶことを想定していただくのが困難になっていると思う。

そうした人口に、いかに働きかけるか。
メチャおいしい「寿司」「もつ鍋」「ラーメン」に、どう勝つか。

映画文化において、予告編映像を見せることで「映画館に足繁く通う」動機付けがなされているのと同様、コンサート会場で、他の演奏会のチラシを目にすることは、「上演興行に足を運ぶ」きっかけづくりになると考えている。開催日時や曲目程度なら、雑誌のコンサートガイドで十分だが、チラシの美しい配色で、演奏家の顔写真やプロフィールを目にすれば、上演モノへのワクワク感が高まるものだ。

その某ホールでは「チラシのはさみ込み作業」について集合時刻がほんとうに前日にならないと回答してもらえないケースが多く、「その時間帯は諦めねば」の体験を何度かしたので、「チラシを有料(1枚3円程度)で受け付けるような撒き屋さんシステムを構築してはどうか」と発言してみた。事業部回答によると「チラシについてはアンケート等で邪魔と書かれるお客さんが多いんです」とのことであった。

うむむ、うむむ。
時代はエコロジー志向に向かっているだけに、演奏会場でチラシは紙資源の無駄であると感じ、大量な上演チラシにもある種の嫌悪感を感じる観客層がいるのは、納得できる。

でも、なんだかついついガックリ来た。
「チラシは邪魔」という意見を書くお客さんは、新聞屋さんにも「うちはチラシ要りませんので」と言っているかもしれないので、そういう方は、入り口のプログラム受け渡しの時点で「チラシは要りません」と辞退していただくことにして、チラシを受け取れる可能性そのものは、増やして欲しいと思う。

まあこういう望みは興行屋としての利己主義で、こんなことを望んでいるようでは「美しい地球」を守れないのだろう . . . . . よね。

スピルバーグ映画『マイノリティ・リポート』(2002)に描かれる未来都市では、雑誌や新聞が「紙」ではなくて「紙状の受像モニター」になっていた()。街をゆきかう人々は、その受像モニターに時々刻々と映し出される「情報」を読んでいた。
ついでにいうと、主役のアンダートン刑事(トム・クルーズ)はやたらクラシック好きで、捜査のあいだじゅう毎度毎度シューベルトの未完成をかけ()、仕事が終わった途端にチャイコフスキーの5番を聞くという、実に奇特なお方であった。
「コンサートチラシ受像モニター」の時代が到来するよう技術革新に期待するとともに、すべての刑事がクラシック音楽に親しめるような労働体勢に向け、日本の警察の労務改革に期待する。

7 件のコメント:

  1. 東京で感じるのは圧倒的に中高年層のお客さんが多いことだ。先日学生と話したが、まず今の学生は時間がない。バイトに追われている。次が経済事情で、学費、生活費に支出して残りは交際費となると、コンサートなど文化教養への支出は限りなくゼロに近い。

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  2. 大変興味深い内容ですね。
    コンサートが「すし」に勝つにはどうすれば良いか,もっと多くの人が議論してくれればいいなぁ,と思います。

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  3. 学生がアルバイトに追われていることは、福岡でもかなり感じます。現代は、生活にお金がかかりすぎるのでしょうね。

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  4. 次の研究主題は、"How can a concert win a Sushi bar ?" で!

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  5. 「すしに勝つ」のを目指すのも手ですが、「すし」(いや、別に「すし」でなくてもいいんですけど。笑)とタイアップする、ってのも手ではないでしょうかねえ?

    例えば16世紀フィレンツエメディチ家の饗宴の際の音楽とその食事の再現を提供するとか(自分が行きたいんですけどね、そういうの。笑)。

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  6. こんにちは

    たしかにアマオケの人は、あまり演奏会には行きませんね。熱心な人ほど練習を優先します。私は演奏会に行ってしまう方ですが(^^;


    独身時代、今の主人と付き合うようになって、最初にもらったプレゼントは、九州交響楽団の定期会員の会員証。一年先までデートの予約が入っているようなもの。上手い事考えたな~って思いました。

    「彼女に演奏会の定期会員の会員証をプレゼントして、一年先までデートの予約を入れよう!」って宣伝につかえそう(^^;

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  7. 寿司とタイアップ、なるほど。
    渋谷文化村が、ミュージカルのチケットとお食事券をセット販売にしているのとか、それに近いですね。
    西新地区でどうやったら展開可能か、ゆっくり検討します。

    たかぴさんのご主人様のロマンチックなアイディアに感服。
    エモーショナルな広告方法、参考にさせていただきます!

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